NAKANO APPARELNAKANO APPARELNAKANO APPARELNAKANO APPAREL

MAGAZINE
Vol.3

サスティナブルな未来を広げる
“3Dパターン”

ここ数年、デジタルはより目覚しく進化し、様々なことが可能になり新しい常識が生まれています。セルフレジや、オンラインミーティングも今や当たり前の光景になりました。その中でアパレル業界の”未来の当たり前”になりそうなのが、今回のテーマである”3Dパターン”。当社で3Dパターンに携わる2人に話を聞いてみました。

 

プロフィール

吉住 健太郎

ナカノアパレル入社4年目。
25年間繊維商社に在籍しておりまして、8割方レディースの仕事をしておりました。
アイテムは帽子からアパレル等衣類を一通り経験。
そしてナカノアパレルで新しい風を起こしてひと騒ぎしようと思い、この会社に入社を決意しました。

清水 ふみ

パタンナー歴7年目。
レディースパタンナーとして日々業務に取り組んでおります。
2年前から3Dパターンを導入し、新しいものが好きなこともあり「やりたい!」と立候補して3Dパターンを専任で行っています。

TOPIC 1.
3Dパターンとは端的にいうとどういうもの?



一 今回は3Dパターンについてのお話をお伺いしたいと思っているのですが、端的にいうと3Dパターンとはどんなものでしょうか??

清水:
はい、3Dパターンとは、2Dのパターンデータをデータ上で立体化(3D化)することです。3Dのキャラクターにサンプルとなるものを着せ付け、実際の着用感や素材の落ち感など、画面上で表現したりすることもできます。
通常のサンプルでは、様々な工程を経て、仕上がります。1週間程度かかって上がってくる実物のサンプルに対して、3Dパターンでのサンプルは、あくまでもデータ上のことですがはやければ20分。だいたい1時間程度で仕上がることが多いです。

一 そんな早くに3Dパターンではサンプルが上がるんですね。では3Dパターンのメリットをお話しいただけますか?

清水:
3Dパターンのメリットは、”デザイン修正が容易に行える点”です。どうしても実物のサンプルではないので、触って確認したり、縫製部位の細かな部分までは表現できないこともありますが、見え方すなわちバランスなどの修正がその場で行うことができます。
もう一点は”時間がかからない点”です。
実物のサンプルは、修正があればサンプルのあげ直しを行うので、また日数がかかってきてしまいますが、時間の短縮が大幅にできるので、お客様をお待たせすることなく、再提案がスムーズに行えます。
まとめると、時間が大幅に短縮されるので、お客様をお待たせすることもなくデザインの修正がすぐできて、再提案できる点が3Dパターンの最大のメリットだと考えています。
また、これらを実物のサンプル縫製の前にすることでよりお客様の理想に近い形を効率よく作り上げることができると思います。

一 では清水さんが今までのパターンを制作する作業で、3Dパターンのおかげでお客様に対応しやすくなっていることはありますか?

清水:
お客様によっては、イメージを重視し、指示寸法(袖丈何センチ等の指示)無しでご依頼を受けるときもあります。また、指示寸法はあるけれども雰囲気としてどのようになるか悩まれてデザイン画を描かれているケースもあります。
その際には3Dパターンで立体化し、数字からでは見えない雰囲気を見ることでイメージを膨らませます。お客様ともイメージを共有しやすいです。お互い共通で見えているものがあるので、すり合わせる時間は短縮できていると感じています。

TOPIC 2.
3Dパターンではどんな”サスティナブル”な未来を実現できるのか?



一 確かにサスティナブル観点でも大きく貢献できそうですね。少し大きなことを聞くかもしれませんが、3Dパターンで今後どんなサスティナブルを実現できるとお考えでしょうか?

吉住:
まず、3Dパターンを使いサンプルを制作することで、1個目のサンプルは作りますが、以降のカラーバリエーション部分のサンプルを省くことができます。これは無駄なサンプルを制作しないと言った観点と、時間を省けると言った観点で非常にサスティナブルなことだと考えています。これは我々、お客様の双方にとってとても大きなサスティナブルなことだと思っています。
また”サスティナブル”というワードに関しても、1年前と比べて格段にお客様の反応が良くなりました。やはり皆さんとても敏感に”意識している部分だな”と最近強く感じます。
3Dパターンは、”時間”と”資源”の2点のサスティナブルを実現できるものであると思っています。

一 なるほど、非常によくわかりました。ではここから今のサンプルを制作するだけではなく、”3Dパターンはこのように活用されていく”など、新しい話があれば教えていただけますでしょうか?

吉住:
消費者の観点で言えば、3Dパターンはオンラインショップなどに一部ではありますが導入され始めています。自らの身長と体重等入力すれば、コンピューターがサイズを教えてくれる。実際の着用感などが画面上で見ることもできます。当社のお客様でも一部導入されています。
近い未来、オンラインショップもより進化すると思います。実物の商品を作らずして3Dデータのみで販売するECサイトがたくさん出る時代がくると思います。リアルな3D画像であたかも本物のような状態の商品を見ながら、さらに自分たちがよく知るモデルがそれを着用している画像も見ることもできる。それを見ながら買い物ができる。
サスティナブルな観点からすると、アパレルメーカーは3Dオンラインショップで集めた消費者からの受注を集計してから必要な分のみ生産をする。この業態は、この作りすぎないサスティナブルアパレルの在り方として存在価値を見出されるものと思います。
また実店舗においてはVMD(ヴィジュアルマーチャンダイジング)といって自らの店舗に何を並べるか、判断する際にも役立ちます。まず店舗の背景画像をいただき、画像データをパソコンに取り込みます。そこに3Dパターンで作成したサンプルを配置することで、ショップにどのように並ぶか、目で見てシュミレーションすることができます。実物のサンプルを用いて店舗に並べて行っていたことが、オンライン上で可能になるんです。これらの使い方はすでに活用されていますし、オンラインショップの導入も今回色々な社会の変容が起きたことで、急速に進むのではないかなと考えております。

一 実際、ナカノアパレルに導入してからのお取引先の声はどんなものがありましたでしょうか?

吉住:
当社の場合は、OEMによる製造に基づきこれを導入してますが、相対するのはお取引先のデザイナー、マーチャンダイザーになります。当初は”やはり実物の質感等見ないとわからない”という声も多くありました。それは当然のことだと思います。ただ技術の進歩による3Dの表現力でその見方も変わりつつあると思います。時間的、資源的な合理性の観点より今までの実物重視の思考と混ぜ合わせたやり方が受け入れられつつあると感じております。
消費者はこういったものにとても敏感です。新たな購買の可能性として興味を持っていると感じています。
その時代の流れに沿って我々も先駆者でいたいと考えます。
今までのクオリティを損なうことなく作業が行える。3Dパターンを導入することで生み出される時間的な余裕を生産性の向上や更なる商品の改善やその追及をすることが可能です。またそれは、資源的にもロスを削減するというサスティナブルな一面もある。これらを実感してもらうことが必要だと感じています。
これらが浸透していくことで、縫製工場の在り方も変わる要素だと思います。
当社の経営理念である“サスティナブル縫製工場”がモノづくり文化にイノベーションをおこす。この言葉を実行できる一つの要素として3Dパターンの存在を感じております。

UPDATE :
Dec.3rd.2021